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曼珠沙華腰巻の美術世界
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長崎新聞2009/11/5
時を継ぐモノ 
   長崎の作家たち
          -12


「 どてら昭和心中」。内藤
修子さんが10月、福岡市内の
老舗ギャラリー「アートスペー
ス獏」 で開いた個展のタイ
トルだ。福岡は学生時代と、結
婚後の一時期を過ごしたなじ
みのある土地。同ギャラリー
には、飲食を利用する福岡市
民をはじめ、福岡を代表する
美術作家らが訪れる。長崎に
はない玉石混交の刺激を求め、
毎年、福岡での個展に挑む。
 「どてら昭和心中」とは、
昭和時代に生まれた自身が、
命のつながりを表現する場と
して名付けた。照明を落とし
た会場は、どてら、てるてる
坊主、風呂敷包み、座布団が
随所に並べられて、郷愁や時代
錯覚とは違う、壮厳な雰囲気
が漂う。内藤さんならではの
インスタレーション作品。
 壁面全体には、227人の
名前が書かれた壁紙を張っ
た。以前、個展会場に来た人
に、各自記憶に残る3世代の
名前を書いてもらった証し。
見るだけではなく、名前を書く
という行為を通して、連なる
命について思いをはせてもら
うことを狙いだった。その行
為を生かすと同時に、意味に
ついて再び問い掛けるため、
作品と併せて展示した。
 ”昭和時代” の事物が混在
する個展空間。だが、通奏低音
としてあるのは、命のメッ
セージだ。
 10月19日。開幕日の昼すぎ、
内藤さんは、来場者が見守る
中、会場で、「おにぎりパフォ
ーマンス」を始めた。正座を
し、ご飯を握った。
 平たい丸い「おにぎり」は、
幼いころ見たお通夜で出さ
れた形。死んだ人と別れる夜、
「おにぎり」を通して、自然
と会話が生まれる光景が不思
議に思えたという。個展会場
は、その当時の感覚を再現す
るための場でもある。
 千々石町出身。小学生のこ
ろから絵を描くことが好き
で、県立小浜高出は、美術同
好会を立ち上げた。転機は17
歳の時、兄が転落死したこと
だった。この時に感じた「悲
しみ」は今も癒えることなく、
美術に寄り添い続ける理由の
一つとなっている。
 結婚後、子育ての傍ら、子
どものための造形教室や人形
教室を開催。教えながら子連
れで地元の油彩教室に通い、
デッサンなど基礎表現を磨い
た。
 夫の赴任地でも、旺盛な好
奇心と行動力で、美術活動を
こつこつと続けた。インスタ
レーション、絵画、オブジェ、
人形など、表現方法は多様だ。
 中でも、油彩画においる人物
表現には定評がある。200
6年、福岡県の田川市美術館
が主催する美術公募展「第15
回英展」で油彩画「昭和血縁
ノ哀隣」が入賞。「昭和」と
いう時代を象徴する場面とし
て、戦争で日本に残された家
族の肖像画を描いた。
 いつか、人々の記憶の隅に追
いやられてしまうのであるかも
しれない「昭和」の原風景。
その危機感が兄の死ととも
に、内藤作品の原点となって
いる。


美術家
内藤修子

ないとう・しゅうこ 1949年南高千々石町(現在雲仙市)生まれ。70年結婚後、諫早市などで子ども造形教室、人形教室を開講。94~99年・福岡市内で仏壇シリーズ「故郷を出た女」個展。98年、第5回長崎新美術展入賞。個展グループ展多数。現在、長崎市内保育園非常勤保育士、長崎歯科衛星専門学校美術講師。同市在住。

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